法話
Shorinji Kempo

学んだこと、鍛えた力を発展させ維持していく理の力

『 ④理解する努力(間違いや、無駄をしない訓練)

 基本をしっかりと身につけると、自分のやっていることが本当に理解出来るようになってきます。  』                            

 

少林寺拳法を習い始めると学ぶときに、「上手な人をみて真似、やり方を聞いてみましょう。」という指示がなされます。どの道院でも丁寧な指導を心掛けていますが、指導者たちに共通して備わっているのは、観察する力です。高段者になるほど無駄や斑が省かれ、理に基づいた動きを体得するようになってくるからです。

 

仕事でも同じことが言えます。一日八時間労働として、それをまともに働きぬける体力とは結構、障がい者にとって高いハードルとなるでしょう。しかし、知的障害者に与えられる仕事には、座りながら行える職種などは、そうあるものではありません。体力を補う工夫が必要なのです。

 

あしたか訓練校では、これを身に付けさせるために。四角い鋼材を切り出し、万力に挟んで鉄やすりで球体に磨き上げるという訓練で、作業に強い姿勢を身に付けさせています。

こうした、訓練は就労を維持していく上でとても大切なことなのですが、特別支援学校を見学しても皆無でした。

 

労働基準法では、重さ10kg高さ1m以上の作業について、軽減できる工夫を企業に求めていますが、逆に言えば、これに耐えられ対応できる体力を持ちなさいということでもあるのです。

 

心と体の両面から正しい姿勢を身に付けながら、体力を身に付けられるのが少林寺拳法の特徴でもあります。

少林寺拳法は、最寄りの金剛禅の道院で「修行の一環」として指導されていますので、心と体の成長を求めて始められてはいかがでしょうか。どの道院でも随時、体験入門を行なってもらえますので、親子でご相談ください。

 

私からのアドバイスとして、学んだこと、鍛えた力を発展させ維持していく力は、家庭に根源がなければなりません。親御さんの正しい支えが重要なのです。ぜひ、ご相談や見学にいらしてください。

基本がしっかりとしていてこそ、理想を現実にかえることが出来る

『 ③基本動作や約束の確立

約束を守らせ、怠らせない。「約束を覚えられるか」ではなく、「維持ができるのか」が最大のポイントとなります。  』

今日は「約束を守り続けることは就労する中ではそんなに難しくなってしまうのですか?」というご質問へのお応えです。

 

少林寺拳法を学び始めたころに、基本をしっかりと身に付けないと、高い技術は身に付けられないぞと学び、格好の良い派手な技術よりも一つ一つの突きや蹴りの技術を磨けと習ったものです。

そんな私が武専(指導者養成機関)の教員として、各地へ指導に行きながら主に伝えているのは、攻撃よりも防御である受けの技術だったりしています。

少林寺拳法は主守攻従(守ることが主で、攻撃は完全な防御の後という教え)の技術ですから、守ることがしっかりできていてこそ、より深い技術が身に付けられるというのが、私の自論です。

なんの防具も付けていない自分のおなかに思いっきり蹴り込みをしてもらい、それを、姿勢による人体の強化で跳ね返したり、布切れのように緊張を無くし吸収したりして、物事に対する陰陽両面の取り組み方をみせ、自分の身に付けた技術を「信じる」という胆力に変えていく事を説き、その力で人前に立ち、人を説得できる力を身に付けなさいと説いています。

 

さて、先日の笠井中学校の授業で話した基本の大切さについてですが、知的障害を持った部下たちを育てるのに、一番に注意していなければならないのが、約束を守らせ、それを、維持し続けられるように見守り続けることにあるのです。

聖隷クリストファー大学からの依頼で「障がい者の就労維持」について共同研究した際に、見えてきたのは、約束事を覚えてもそれが適切な指導と管理がなされず、放置されると「粗雑化・簡略化・省略化」が起き、求められている行動が取れなくなり、その行動が定着してしまうまでに放置されると、修正が出来なくなってしまうのです。こうなると作業で機械を使っているような場合、故障だらけで作業にならなくなってしまい、品質や生産量ばかりか作業の安全性さえ確保できなくなってしまうのです。

皆さんが何かを習い始め、しばらくすると、行動が滑らかになり、上達し始めるのですが、知的障害を持った人たちには、この部分を周囲がしっかりと見守り、適切な上達をコントロールしないと、行動に対する無駄の省き方のさじ加減が理解できずに、出来ていたはず、教えてあったはずの仕事が出来なくなってしまうのです。

だから、学校教育で必要なのは「約束を守る大切さを教え、その姿勢を守って行動していく」ということを教えなければならないのです。

・能率的順序を徹底的におぼえる

・確認動作を行ないつづける

・基本的な自分の担当範囲をおぼえる

・動作で余裕が作れるように訓練

・他との互助をおぼえる

この様なことをしっかりと教え込んでいく事で戦力として育てているのです。

訓練教育では、こうした姿勢を学んで社会に出ますが、通信制の普通教育や養育・福祉的教育では学ぶことなく就労を目指すことになります。そんな状況ですから、約束は二週間も維持されず、自分勝手な行動が目立つようになり崩れてしまうのです。

二週間も実習を続けていると家庭や学校、福祉は負担として認め受け入れてほしいと考えるのですが、企業では二週間も教えているのだからもう覚えて仕事が出来るようでなければ受け入れられないということになってしまうのです。

中学校で学んでいることを、維持し続けられる力が家庭になければ維持していく事はとても難しいことなのです。

金剛禅の道院はそのお手伝いが出来ると思います。最寄りの道院を探して相談してみてください。

『最小限の動きで、最大限の成果を引き出す』理を生み出す

質問へのお答え (その2)

『障がい者にも生産性を求めるのですか?』

 

少林寺拳法を学ぶと最小限の力で、最大限の成果を引き出すことを学びます。老人でも女性や子供でも相手を効果的に倒す技術、それが「当身の五要素」です。

障がい者スタッフにしっかりとした成果を出してもらい、雇用を守っていくためには、周囲の負担にならない「戦力としての力」が重要になってきます。

それには、生産性を高めた手順を生み出し、動きを維持し、洗練させるための工夫が必要です。ユニバーサルデザイン化もその一つですが、工夫だけでは「安全性・品質・生産性」の三条件を満たし、維持していく事は出来ません。少林寺拳法の当身の五要素のように、絶大な効果が必要なのです。その工夫を身に付けるために必要な条件として、手順を維持できる姿勢が身についていなければなりません。

 

『   ②手順をまもる

          約束を守れない方の指導は困難であり「安全性・生産性・品質」が保てず、必要とされません。』

 

とは、障害を持っていても戦力として「安全性・品質・生産性」を高く保つことが出来なければ、生産の現場では何もさせることは出来ないということです。企業にはPL法(製造物責任法)、各法律への対応が求められるからです。

しかし、働きやすく、理解しやすいい環境(ユニバーサルデザイン)と教育を工夫することで、戦力として育成していく事は可能なのです。

これが出来きる企業では、法定雇用率を超えて障がい者雇用を伸ばしていく事が出来るのです。

 

「手順を守る」ことは、それを可能にするために必要な絶対条件です。障がい者にとって、学校教育期間中に身に付け、卒業後は家庭で維持していなければならない重要な事項なのです。

 

しかし、訓練教育以外では、なかなか、この教育は難しく、未成熟なままの企業への丸投げは、障がい者雇用を困難なものにしてしまっているのです。学校教育で身に付けたことを、本人や家庭に生涯かかわっていける中で指導を受け続けられる、環境が必要なのです。

金剛禅の道院で、親子で少林寺拳法を学ぶことも選択の一つとして考慮されてはいかがでしょうか

「~してもらうのではなく、自分で~をする」姿勢が自立の一歩です

今日は、「浜松市立笠井中学校で授業をしてきました」の記事をご覧になった方から、質問のメールをいただきましたのでお答えいたします。

『 ➀目標や価値観を持った努力

目的意識や正しく周囲からも認められる価値観の持ち、

良い仕事を多くできるようにする。』

 

今日はこの部分への質問からお答えします。障害を持ったお子さんが、何かをする時にマイペースで出来るのを待ち、出来なければ手伝って完成させれば良いのでは、障害があるのだから周囲が気を付け配慮するのが当たり前なのでは・・・。というご意見のようですが、「企業への就労を目指すのには・・・。」というお話を求められた上での講義だとご理解いただければよろしいかと思います。

企業は福祉ではありませんから、収益を出さなければ雇用は維持されません。障がい者の就労においても、重要な条件は「安全性・品質性・生産性」の確保であり、PL法(製造物責任法)等の各法律への遵守は同等に求められるのです。

約束事を守り続けることでこれらを実現出来るようにしていくのが、「合理的配慮」であって、企業へは障がい者が安心して、仕事をすることが出来る環境を作り出すことが求められていますが、それは、採算を度外視して遊ばせていればよいという話ではありません。

このことを特別支援学校では、しっかりと理解し、周囲がしてあげる教育をかえなければ、知的障害者の方には、条件の良い就労のチャンスは生まれてこないでしょう。

例え運よく就職できても、それを維持していく事は非常に困難なことなのです。だから、あしたか訓練校のような「訓練教育」へ進路したものと、特別支援学校での「養育」しか受けていないものでは大きな差が生まれているのです。

しかし、訓練校に行ける者はほんの一握りです。だから、これを乗り越えてチャンスを得ていくために必要なのが、お話で取り上げた8つの項目なのです。これを、わかりやすく言えば、

➀目標を常に持ち②順序を守り③基本的な約束を守り続け④仕事を理解し⑤判断力を向上させ⑥総合力を向上させ⑦体力を補う姿勢を身に付け⑧改善活動と確認を怠らないということになるのです。

これは、私が障がい者雇用で採用された社員を、教育するために、金剛禅の「修行の心得」を応用して用いたものです。

当日の授業では、育てた社員の働いている姿を動画で見せ、「自立」に必要な取り組み方として説明させていただきました。

「障がい者だから・・・。」と思って見始めた生徒や先生方の動画への感想は「全く障がい者に見えなかった・・・プロ!!」と驚いていました。

生徒さんたちや先生方も、甘くない現実を知り、生徒からは、「普段先生たちから教えられていることの大切さが分かった。」、そして、先生方からは「教えていることの真の意義が分かりました。」との感想が聞かれました。

 

「どうすれば授業に呼ぶことができますか?」という質問については

この授業は、静岡労働局の障害者就労アドバイザーとして中学校より呼ばれました。知的障害者への担当は大井川以西、発達障害者へは全県下の担当となっています。静岡労働局の職業対策課への申し込みとなります。また、個別での相談は日曜日の練習時に湖東町の礼拝施設で対応させていただきますので連絡してからお越しください。

道院長 江間 090-3835-9109 mail hideki362018772@gmail.com

 

 

 

浜松市立 笠井中学校で授業をしてきました

9月15日(13:20~14:30)の日程で浜松市立笠井中学校の発達支援組に通う、1~3年生と先生方合わせて40名ほどの皆さんに「将来、就職して自立するためには、今、どのような取り組み方をすれば良いのか」というテーマを頂き、静岡労働局を通した依頼で、授業を行なってきました。

 

授業では「自立を目指して働く力を身に付けよう 八つの取り組み」というお話をしました。

 

以下は内容です

➀目標や価値観を持った努力

目的意識や正しく周囲からも認められる価値観の持ち、良い仕事を多くできるようにする。

②手順をまもる

約束を守れない方の指導は困難であり「安全性・生産性・品質」が保てず、必要とされません。

③基本動作や約束の確立

約束を守らせ、怠らせない。「約束を覚えられるか」ではなく、「維持ができるのか」が最大のポイントとなります。

④理解する努力(間違いや、無駄をしない訓練)

基本をしっかりと身につけると自分のやっていることが本当に理解出来るようになります。

⑤数をかけ経験知・判断力を養う(経験したことを記憶する訓練)

「理解すること」と「出来ること」とは違います。理解不足・不慣れでは仕事に「滑らかさ」が出せません。経験を積み重ね洗練された動きの獲得、「そのタイミングでそれを行う」という訓練が重要です。

⑥片寄らない力をもつ

総合力と質の向上を図り、協調性の育成をすると他人から求められる人材になれます。

⑦体調の自己管理(安定した戦力としての最低条件)

仕事に支障を出さない社会人の基本として、正しい姿勢を身に付け、安定した戦力としての自覚を持つことが自分を護ることになります。

⑧基本を礎に進化(マンネリ化しない取り組み方)

常に「計画・実行・評価・改善」の繰り返し出来ることを増やして行く、能力を磨いていきましょう。

 

という八つの心得を子供たちに解りやすい様に、普段、私と一緒に働いている障がい者の動画を見せ、どんな訓練をすると出来るようになるのかを教えました。

動画や訓練の仕方、そして、挨拶がいい加減な子供たちには、「おはようございます」と言わせたときにそっぽを向き気が付かないふりをして応えず、「江間さん、おはようございます!!」と名前を付けて挨拶してごらんと教え。名前を付けることによって相手に意識させ、支援力を引き出す、挨拶の必要性を生徒たちとのやり取りでしてみせるなどの工夫をして授業をしました。

先生たちは、生徒たちがこんなに長い時間の講義に集中できていたと驚いていました。私が以前に講習会で先生方にしたアドバイスを実践されていたそうですが、なかなか生徒には伝わらなかったようで、その場で注意するのとは違い、動画で観て感じたうえで訓練してみるという今回の授業はとても勉強になったとのことです。生徒たちも大切なところはパワーポイントを写し書きながらメモを取り集中して勉強できていました。皆さん話が理解できたようで笑顔で喜んでくれていました。

 

皆さんは気が付きましたよね。

これは、金剛禅の「修行の心得」をもとにした内容です。

単なる学科として覚えるのではなく、教えの本当の意味を理解して、それを、世の中をよくしていくために伝えていく事が大切な布教なのですよ。少林寺拳法を修行して身に付ける行動力と併せて、他人をも支えられる知識を身に付けるように勉強してください。それが、金剛禅の目指す「拳禅一如」の姿勢です。